固有種の花に会える、雨の森へ
2020年6月8日 沖縄県国頭村
写真家 今泉真也
6月の沖縄・やんばるの森は、新緑がひと段落したあとの恵みの雨の季節。今年は例年より雨がしっかりと降ってくれている。長年撮影を続けてきた森だが、この1年は新しいカメラLUMIX S1Rで改めて撮影に取り組んでいる。それまで使用していたメーカーのものも悪くはなかったが、このカメラが描きだす写真はデータというよりも「写真そのもの」という品格を感じさせ、撮影後の作業も楽しみで仕方がない。撮るときのフィーリングも素晴らしく、僕にとっては昔使っていたNikon F3やPENTAX LX以来の銘機だと感じている。
さて、S1Rの大きな特徴のひとつに防塵防滴性があり、森でもプロ機材の基本である「動き続けること」に応えてくれているが、マーキンスの雲台についても同じことがいえると思う。僕の撮影現場は不整地がほとんどで以前から自由雲台を使用していたため、購入後すぐにマーキンスの造りの良さがわかった。詳細は他の方々が山ほど書いているので省くけれど、それ以来よき相棒として、厳しい現場にもついてきてくれている。
今回の撮影地はやんばるの東海岸側にある伊部岳。ノグチゲラの調査も兼ねて森に入った。ここはかつて米軍が山の斜面を実弾射撃場にしようとしたとき、村長以下住民が中心となって着弾地に座り込み、発射地にも突入して演習を阻止した歴史がある。特殊な政治環境に置かれている沖縄では、自然も平和も努力なしでは守られないという一例だ。
この撮影地での目当ては沖縄島固有の植物、リュウキュウコンテリギ。わりと各地の山で見られるが、ここの花はそろそろ開くだろうと先週確認しておいたのだ。
そしてこの場所を紹介するにあたって一点、やんばるの森は蚊やブユ、ヌカカといった痛い痒い生きものの宝庫でもある。試しに使ってみた虫除けシャツは沖縄のブユたちには効かず、同様に虫除けスプレーもまったく気にせず彼らは向かってくる。子孫を残すための母親たちの行動には頭が下がる。ほかにハブもいるし遭難事例もあるので、森に入るときにはガイドを依頼してほしい。伊部岳の場合、国頭村のガイドツアーサービスがある。
念のため、今回の撮影地である森林生態系保護地域は森林管理局などへの許可申請が必要となるが、ガイド同行でならそこはクリアされるのも利点だ。またやんばる地域では野生動物のロードキルが以前から問題となっている。レンタカーのスピードはくれぐれも控えめにしてほしい。
そしてこの場所を紹介するにあたって一点、やんばるの森は蚊やブユ、ヌカカといった痛い痒い生きものの宝庫でもある。試しに使ってみた虫除けシャツは沖縄のブユたちには効かず、同様に虫除けスプレーもまったく気にせず彼らは向かってくる。子孫を残すための母親たちの行動には頭が下がる。ほかにハブもいるし遭難事例もあるので、森に入るときにはガイドを依頼してほしい。伊部岳の場合、国頭村のガイドツアーサービスがある。
念のため、今回の撮影地である森林生態系保護地域は森林管理局などへの許可申請が必要となるが、ガイド同行でならそこはクリアされるのも利点だ。またやんばる地域では野生動物のロードキルが以前から問題となっている。レンタカーのスピードはくれぐれも控えめにしてほしい。
S1R / SIGMA 14-24mm F2.8 DG DN / F14 1秒 ISO1250
50年前まで人の住んでいた場所も森に戻りつつある。
蒸し暑い雨の森を登っていくと、ところどころで森から声がかかる。「撮りに行く」のではなく、「撮らされる」感じ。だからなかなか上へ進めない。ようやく目当ての沢にたどりつくと、咲いてる咲いてる! 風雨に激しく揺さぶられながらも、小さな花たちが空を見上げて一心に咲いていた。大型のアジサイは沖縄に自生していないので、指先ほどのこの花が梅雨時期にはうれしいお花見のプレゼントなのだ。
林内は暗いものの、手振れ補正の効くS1Rなら手持ちできないほどではない。しかし迷わずマーキンスのついた三脚をセット。理由は風だ。花は一瞬たりともじっとしていない。レンズは愛用のMFレンズなのでもともとAFはない。ミラーレスのファインダーを覗きながら、森の空気感を一番伝えてくれるアングルでシャッターを切った。微妙な指先の動きをカメラに伝えてくれるマーキンスは撮影のじゃまをしない。L-プレートで、三脚ポジションを変えずに一瞬で縦位置撮影にも切り替えられる。泥だらけの現場でも根を上げないヘビーデューティさとともに、この雲台は繊細さを持ち合わせている。
ここでレリーズケーブルについても触れておきたい。S1Rはソケットがサイド上方にあるので、PLV100170では問題なく使用できる。ただ僕個人は超マクロなど、どうしても必要なとき以外はレリーズはほぼ使わない。指でシャッターを切る感触が好きだからだ。
林内は暗いものの、手振れ補正の効くS1Rなら手持ちできないほどではない。しかし迷わずマーキンスのついた三脚をセット。理由は風だ。花は一瞬たりともじっとしていない。レンズは愛用のMFレンズなのでもともとAFはない。ミラーレスのファインダーを覗きながら、森の空気感を一番伝えてくれるアングルでシャッターを切った。微妙な指先の動きをカメラに伝えてくれるマーキンスは撮影のじゃまをしない。L-プレートで、三脚ポジションを変えずに一瞬で縦位置撮影にも切り替えられる。泥だらけの現場でも根を上げないヘビーデューティさとともに、この雲台は繊細さを持ち合わせている。
ここでレリーズケーブルについても触れておきたい。S1Rはソケットがサイド上方にあるので、PLV100170では問題なく使用できる。ただ僕個人は超マクロなど、どうしても必要なとき以外はレリーズはほぼ使わない。指でシャッターを切る感触が好きだからだ。
S1R / Leica Macro-Elmarit-R 60mm F2.8 / F3.5 1/50秒 ISO2000
リュウキュウコンテリギの花。アジサイ科とは思えない控えめな姿だ。
僕のマーキンスはいつも気がつくと泥だらけになっている。しかも、
岩には毎日ぶつかるし、よく壊れないものだ。ノブ位置の好みは人それぞれだが、僕は手前で使用するのが性にあっている。
また、クイックシューノブがヤブ漕ぎ時に緩んだことがあった。毎回カメラを外すわけにもいかないので、ワンタッチでノブを保護できるパーツを自作した。気に入った道具にはいろいろと手を加えたくなる。
S1R / Leica Macro-Elmarit-R 60mm F2.8 / F8 1/160秒 ISO1600
イジュの花。雨に溶けていくこの花びらは素敵だった。
夕暮れまで森とともに歩き、ラストに恥ずかしくもセルフィーでプロフィール写真を撮って山を降りた。マーキンスにひとつ望むとすれば、夕暮れや夜の森に置いておいても目立つ「白マーキンス」があるとうれしい。見通しの悪い森では、機材を置いて空身で偵察に行くことがよくあるのだ。さらに「金マーキンス」は……さすがに使わないかもなあ。
1970年生まれ。沖縄の自然や人を、風土と生態系の視点から撮影し続けている。テーマは「人と自然のつながり」。著書に写真絵本『月ちゃん』(三恵社)、『ジュゴンに会った日』(高文研)などがある。現在はやんばる全域の撮影に取り組む。
日本風景写真家協会会員
ウェブサイト: www.shinyaimaizumi.com