秋田の春を探しに

2021年3月25-26日 秋田
写真家 小松ひとみ
写真家 小松ひとみ
南から桜の便りが届くと、いてもたってもいられなくなり南へと車を走らせ、そこから北に向かって桜旅を始める。そんな恒例の撮影行が、今春は昨年来のコロナ禍のために叶いません。仕方なく桜が北上してくるのをじっと待つことにしました。それはここ十数年、桜旅のために逃し続けた地元秋田の春の情景と再会するいい機会にもなりました。

今年の秋田は大雪に見舞われ、コロナの被害よりも雪の被害が多く、春を待つ気持ちは例年以上。日差しや吹く風に春の気配を感じながら、早速小さな春を探しに出かけました。

まずは、井川町の国家苑の冬桜に会いに行きました。例年なら蕾が膨らむ時期ですが、今年はまだまだ開く気配がありません。今年の大雪の影響でしょうか。桜は諦めて、地元仙北市の田沢湖へ。天気は崩れる予報でしたが、湖畔に出てみると珍しく風がなく穏やかな水辺。水鏡に映る雪消えの進んだ山並みの穏やかさが、春の近さを教えてくれます。「水温む頃」そんな言葉を胸に撮影しました。派手さはないものの、雪国に住む私たちには充分に春の気配を感じさせてくれるシーンでした。
田沢湖
田沢湖
FUJIFILM X-T3 / XF18-55㎜F2.8-4 R LM OIS / F11 1/58秒 ISO-200 -1EV / H&Y CPL + ソフトGND8
その後、刺巻湿原へ向かいました。雪消えの早い場所から水芭蕉が咲き始め、水辺には小さな座禅草も。遅霜に傷んだ花が少し痛々しくもありましたが、咲き具合を確かめることができました。この日夕方からは雨の予報、翌日には回復しそうなので、朝の光を狙うこととして帰路につきました。

翌朝、残念ながら期待通りの朝日は見られませんでした。雨上がりのハンノキの湿原には霧が漂っており、薄曇りの中での撮影となりました。時折差し込む寸光を逃さぬようポジションを決めていきます。その一瞬の光を捉えるため、相棒である三脚と雲台には私の気持ちのままに動いて欲しいもの。ここぞという時にスムーズに微調整できる使い慣れたマーキンスの雲台が、私の手足となって手助けしてくれました。
ハンノキの林
ハンノキの林
FUJIFILM X-T3 / XF18-55㎜F2.8-4 R LM OIS / F11 1/90秒 ISO-200 -1.7EV
少し太陽が高くなってきたので撮影は水辺の花たちへシフトしました。昨今のカメラやレンズの手ぶれ補正機能の進化で、花の撮影さえ手持ちでする人をよく見かけるようになりました。でも小さな被写体ほどしっかり三脚を据えて雲台を固定することがとても大切です。それにより主役の花と脇役や背景、それぞれの配置を細かく検討できますし、最も重要なピントの位置もしっかりと決められます。固定をおろそかにして配置(構図)とピントが手抜きになっては、花からのメッセージは伝わらないでしょう。
H&Yフィルター
そんなことを思いつつ、昨日のうちに目星をつけていた花たちにカメラを向けました。キラキラ輝く水の流れに春を感じながらシャッターを押す時間は私にとってまさに至福の時です。
座禅草
座禅草
FUJIFILM X-T4 / XF100-400mmF4.5-5.6 R LM OIS WR / F5.6 1/900秒 ISO-800 -0.7EV
水芭蕉
水芭蕉
FUJIFILM X-T4 / XF100-400mmF4.5-5.6 R LM OIS WR / F5.2 1/120秒 ISO-200 +0.7EV
水芭蕉
水芭蕉
FUJIFILM X-T4 / XF100-400mmF4.5-5.6 R LM OIS WR / F14 1/12秒 ISO-200 -1EV / H&Y CPL + Marumi ND4
刺巻湿原を後にし、福寿草が咲く場所へ。春の花は日が差し込まないと開花してくれません。9時ごろには開花してくれるはず…と車を走らせると、花は思った通りに開花していました。残雪の近くに咲く福寿草を狙い、アングルを決めていきます。上を向いて咲く花は構図が難しく、ああでもない、こうでもないと夢中で構図を探します。それはまるで春探しをしているようで心地よく、春の花に癒される満ちたりた時間となりました。
福寿草
福寿草
FUJIFILM X-T4 / XF100-400mmF4.5-5.6 R LM OIS WR / F5.6 1/1600秒 ISO-200 -1.3EV
さて、明日はどこの春を探しに行くとしますか…
写真家 小松ひとみ
小松ひとみ
1956年秋田県仙北市(旧角館町)生まれ。角館南高等学校卒業後、株式会社ユニチカでバスケットボール部に所属、選手・コーチ・マネージャーとして活躍。1983年から千葉克介氏に師事。
1999年に独立し小松ひとみ写真事務所設立。各種雑誌、カレンダーなどで風景写真を中心に作品を発表。主に北東北の四季・花をテーマとし、そこに生きる人々・職人・温泉・郷土料理といったジャンルにも目を向け撮影。2008~2013年 「ぷかぷ館」にて作品を常設展示。
日本写真家協会 (JPS) 会員
日本風景写真協会 (JNP) 指導会員
日本著作権協会会員
ウェブサイト: www.hitomi-k.com

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