夏の志賀高原に会いに行く

2020年8月11日 志賀高原
風景写真家 萩原れいこ
風景写真家 萩原れいこ
私のマーキンスの歴史は、志賀高原と共にある。約3年半前、志賀高原に住み始める頃に相棒として迎え、雨の日も風の日も、マイナス20度の極寒の日も、過酷な状況も共に乗り越えてきた。茂みに分け入り、岩場をよじ登り、どんな所へも連れて行ってしまうので、恥ずかしながら相棒は傷だらけである。しかし、共に撮影した年月は深い信頼関係となり、頑丈な雲台のQ10i-RDはオーバーホールすることもなく今でも大活躍している。
「“上質なもの”は上質な精神と作品をつくる」それがマーキンスへの思いだ。信頼のおける操作性はもちろんのこと、細部に至る心配りや高いデザイン性は、撮影に向かう気持ちを高めてくれる。マーキンスをお供に撮影に出かけると、どこか誇らしげな気持ちになり、背筋が伸びるのだ。「初心者だから、まだ手が届かない」そういう方に、ぜひ使っていただきたいと思う。“上質なもの”を使うことで広がる新しい世界、喜びは計り知れない。

このような情勢になってから、県をまたぐ志賀高原への撮影も久しぶりとなっていた。峠を登っていくにつれ、こみ上げる高揚感。目をつぶっても浮かんでくる顔馴染みの原生林たちが「久しぶりだね!」と声をかけてくれるようだ。「ただいま!」と心のなかで答えながら車を走らせ、最初の撮影地に到着した。
志賀高原
α7RⅣ / SEL70200GM / F11 1/3秒 ISO200 +0.3EV
久しぶりの帰郷をねぎらってくれるかのように、空は真っ赤に焼けていた。レンズは決まっている。“撮り逃さない”こと。停車から最初のショットまでの時間の短さも、マーキンス自由雲台Q10i-RDとダブテールスタイルのプレートによる恩恵である。朝焼けの勝負の時間はスピードが命。ノブひとつでアングルを素早く変え、ピタッと止めて構図を決める。少しだけ傾けたい、そのようなときには少しだけノブを緩め、微調整することができる。緩めた途端にガクンと機材が動くことや、自重で徐々に下を向くこともない。縦位置への変更も、L-プレートの装着で非常にスピーディーだ。
志賀高原
α7RⅣ / SEL1635GM / F16 1/2秒 ISO200 -0.7EV
また、愛用している望遠レンズFE 70-200mm F2.8 GM OSSは、レンズフットをマーキンスLS-20に付け替えることで、従来より約5mm重心が低くなった。ブレが軽減され、驚くほどの安定感だ。レンズフットひとつでここまで変わるのかと、開発者にリスペクトの念さえ湧いてくる。アルミ合金に硬質アルマイト加工の高い剛性を誇りながら、既存のフットより約14gも軽量化された。雲台へセッティングする動作も軽快になり、レンズ交換のたびにわくわくするのだ。“楽しい”ことも、作品づくりに重要なエッセンスである。
マーキンス自由雲台
次へ向かったのは、高山植物の花畑だ。厳しい冬を越えて花開く高山植物は、夏の太陽の下、命を謳歌する喜びに溢れている。下を向いて咲く花も多く、下から見上げるようにして花の表情を撮ることが好きだ。そのときにQ10i-RDとL-プレートが大活躍する。地面スレスレにカメラをセッティングし、虫目線のアングルを確保。小さな花を撮影する際のストレスがない。
マーキンス自由雲台
“ストレスがない”といえば、α7RⅣ用のL-プレート(PS-A92+LS-A92)を使用してしみじみと思う。ボディを傷つけないフィット感、バッテリーの取り出しやすさ、ストラップやレリーズが干渉しない専用設計は、細やかな気配りにマーキンスの心意気を実感する。煩わしさを一切感じることなく、機材の存在を忘れて被写体と向き合える時間は至福のひとときである。
マーキンス L-プレート
最後は志賀高原の名所、一沼へ向かった。池の環境保全のため、一昨年の秋にヒツジグサなどの植物が一掃されたが、自然の生命力は力強く、また静かに葉を広げ始めている。広い池の真ん中でひっそりと花を咲かせるヒツジグサに、エールを込めながら撮影した。
風景写真家 萩原れいこ
α7RⅣ / SEL70200GM / F11 1/80秒 ISO400 -0.7EV
志賀高原は私に大自然のエネルギーを分け与え、写真家や人として育て、「おかえり」と迎えてくれるホームである。いただいた沢山の恩をいつか返したい。そう心に誓いながら、相棒たちとともに夏の志賀高原を出発した。
写真家 萩原れいこ
萩原れいこ
学生時代よりカメラ片手に海外をひとり放浪。自然と文化に魅せられる。好きな場所は志賀高原、嬬恋、沖縄、モロッコ、シルクロード、キューバなど・・・。京都工芸繊維大学、写真表現大学を卒業。後に本格的に風景写真をはじめる。車内泊で日本縦断の撮影旅を敢行。隔月刊「風景写真」の「若手写真家育成プロジェクト」の一環として長野県志賀高原の「石の湯ロッジ」で働きながらの写真修行を経て、現在、Heart of Natureをテーマに撮影をしている。

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