秋の河原でノビタキを写す

2020年10月06日 埼玉県平野部
野鳥写真家 菅原貴徳
ひたすら暑かった夏が過ぎ、関東にも秋がやってきた。僕は野鳥の観察と撮影をライフワークにしている。鳥たちにとって、秋は渡りの時期。夏の間、冷涼な北国や高原で子育てに励んだ鳥たちが、暖かい南へ帰る途中、日本各地の平地を通過して行く。夏ならば遠出しなくては会えなかった彼らに、近所で会える、楽しくお得な時期なのだ。
野鳥写真家 菅原貴徳

今回のターゲット、ノビタキ。やわらかい色彩の秋の河原に似合う鳥だ。

今回探したノビタキは、その名の通り「野」が好きな「ヒタキ」の仲間。子供の頃から、自宅近くの河川敷で毎秋見ていた鳥だ。引っ越してから最初の秋にあたる今年は、夏の間に、近所のめぼしい場所を調べておいた。ようやく秋になって、わくわくした気持ちでポイントをめぐる。
野鳥写真家 菅原貴徳

今回の撮影ポイント。なんの変哲も無い河川敷が、楽しい撮影スポットに変わる。

フィールドに着いたら、焦らずにまずは状況の確認。ノビタキは草木のてっぺんに止まる習性があるので、いれば遠目にも目立つ。自動車を止めた場所でマーキンス BV-HEADを装着した三脚を立て、少し離れたところからフィールドスコープを使用して探してみる。スコープにはPL-55 レンズプレートを装着済みで、瞬時にセットが可能。2軸タイプのマーキンス BV-HEADは、フィールドスコープとも相性がいい。

離れた場所で観察することで広く見渡すことができるし、鳥の自然な行動を見ることができる。晴れた日の日中は日差しが強く、陽炎が出やすい上、鳥の体に陰が落ちやすいので、筆者の場合、昼間は行動観察に費やし、夕方のいい光になった時間帯に、観察を元に導き出した場所で待ち伏せて本撮影を行うことが多い。
野鳥写真家 菅原貴徳

撮影前にどれだけしっかりと観察できるかが鍵

野鳥写真家 菅原貴徳

PL-55 は手持ちのスコープにジャストフィット

ほどなくして、草間を飛び交う姿を見つけた。1羽見つかると、周辺にいる別個体にも気づくことが多いのがノビタキのパターン。まずは今年も会えたことを喜び、遠目に1枚記念写真。
野鳥写真家 菅原貴徳

期待通りにノビタキを見つけた

今回は小さな鳥の撮影ということもあり、久しぶりにKOWA PROMINAR 500mm F5.6 FLを持ち出してみた。現在、我が家にあるレンズ中最重量級とはいえ、システム全体で3kgを切る。機材の軽量化はここ最近のトレンド。オリンパスのカメラとの組み合わせで1000mm相当の画角になり、ブレにはシビアだ。時にテレコンバーターを使用し、1400mm相当や2000mm相当での撮影も試みたが、マーキンス BV-HEADなら余裕で支えてくれる範疇。全く問題なく撮影を行うことができた。レンズには長めのプレート PL-15N をつけてあり、フィールドスコープでの観察から撮影への切り替えもスムーズだ。テレコンの装着・着脱など、前後の重量バランスが変化した時、長めのプレートがあると重心の調節が楽だ。
野鳥写真家 菅原貴徳
野鳥写真家 菅原貴徳
野鳥写真家 菅原貴徳

500mmレンズに2倍テレコンバーターをつけ、2000mm相当で撮影。ブレのない安定した撮影ができた。

野鳥撮影で、三脚を使用するメリット。ひとつは、機材の安定性を確保すること。次に構図の詰め。そして、撮影時に動きを小さくできること。追うと逃げる野鳥だが、待ち伏せていると案外近くまでやってくることがある。その場所を見極めるために、事前の観察が大切なわけだが、せっかく近くに来てくれても、慌てて動けば逃げ去ってしまう。三脚を使い、事前にある程度構図を決めておくことで、いざ鳥が来た時に動作を小さく済ませることができ、結果鳥を逃がしにくいというメリットもあると感じる。
野鳥写真家 菅原貴徳

ノビタキを待ち伏せていたら、近くに現れたホオジロ。小さな動きで、驚かさずに撮影できた。

野鳥写真家 菅原貴徳
水辺なのでサギもやってくる。通り過ぎゆくダイサギをスムーズに追うことができた。
取材日はあいにくの曇天。気持ちの良い秋晴れの下、という望みは叶わず。とはいえ少しひんやりした秋の空気を感じながら、ノビタキと向き合う時間は心地よいものだった。この日会えたノビタキは4羽。まだまだ渡りの時期は続くので、時間を見つけてまたフィールドに出たいと思う。願わくば、その時には秋晴れの空を期待したい。
野鳥写真家 菅原貴徳
待ち伏せていたら近くにやってきた。タデやアワダチソウなど、秋らしい色彩を取り入れての1枚が今日のラストカット。
- 使用機材 -
マーキンス
Q20iQ-BK 自由雲台
BV-24 BV-HEAD
PL-55 レンズプレート
PL-15N レンズプレート
オリンパス
OM-D E-M1 MarkⅢ
M.ZUIKO DIGITAL 1.4x Teleconverter MC-14
M.ZUIKO DIGITAL 2x Teleconverter MC-20
KOWA
PROMINAR 500mm F5.6 FL
ジッツオ
スリック
レベリングユニット2
写真家 菅原貴徳
菅原貴徳
1990年、東京都生まれ。幼い頃から生き物に興味を持ち、11歳で野鳥観察をはじめる。東京海洋大学、ノルウェー留学で海洋学を、名古屋大学大学院で海鳥の生態を学んだ後、写真家に。最新刊『図解でわかる野鳥撮影入門』(玄光社)。ほか『鳴き声から調べる野鳥図鑑』『生き物の決定的瞬間を撮る』『SNAP!BIRDS!』など。
日本自然科学写真協会会員
オリンパスカレッジ講師
Foxfireフィールドスタッフ

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