Yuya Muto | Markins Ball Head
これまで雲台は様々使ってきたが、今回のマーキンスは初めてで、堅牢性・精度の定評を確かめたくて到着を楽しみにしていた。
数日後届いた商品は思いの外コンパクトであったが、コンパクトであることは機材携行の多い私のようなカメラマンにとってはとても助かる。
はじめて手にとったQ20から一番に感じたことは、工芸品のようだという印象だが、それは艶塗装とマット塗りでまとった非常に上品な質感による外観の美しさと、手にしっくりとなじむ操作性から感じたことだ。
操作精度は削り出し加工による絶妙な設計によるものだということが指先から自然と伝わってくる。
また、締め込みトルクの調節ができることにも驚いたが、これは高精度削り出しによる職人がかりの加工精度のみならず、使い手を配慮した設計が徹底しているゆえであることが十分に伺える。
それゆえ大事な操作性は言うまでもなく滑らかで良好だ。小型ながら、手のひらのなかで意図するままに調整できる。
そしてこれは、世間の雲台評価ではあまり見ないものだが、私が雲台に最も求めるのは“ネバリ”である。ファインダー越しのフレーミングで最終の微調整を機材の粘りで行う。もちろんグリップを締め込めば完全に固定されるが、わずかに緩めることでごく僅かに微調整が効くこの状態を私は“ネバリ”と呼んでいる。このネバリにより0(ゼロ)に限りなく近い領域を操作性に委ねることができるのである。デジタルでは解せないファジーな部分とでも言おうか。
これまでブレに対する不安から自由雲台ではなく3WAY雲台を使って来たが、今回Markinsの雲台と出会ったことでこれまでの不安は払拭された。
3WAYに引けをとらない安定感に加えすばやく取れる構図。更にワンアクションで3軸を操作できるのは自由雲台ならではのことだが、今回改めてその利便性に驚いた。
そしてこのコンパクトさが私には非常に魅力的である。三脚携行機会の多いフォトグラファーには是非試してもらいたい。
工芸品のような外観と頼りになる機材、更に所有欲を満たしながら撮影機材としても非常に心強い逸品を手に入れた。早くも次の撮影地に向かうのが楽しみだ。
小高い場所から太陽が昇るであろう方角に向けカメラをセットしていたのだが、幸運にもわずか一瞬、雲の割れ目から日が差した。
風のない小雪の舞うシーンとともに、朝日のぬくもりを感じる情景。
素早い操作性と安定感のある雲台が功を奏し、撮影に成功した1枚と言える。