長根広和 | 自由雲台


テーマ
JR三江線 最後の冬
撮影者
鉄道写真家 長根広和
撮影日付
2018年1月
撮影場所
JR三江線(広島県・島根県)
撮影機材
マーキンス
キヤノン
EOS 5Ds
EOS 5D MarkⅣ
EOS 7D MarkⅡ
EF24-105mm F4L IS Ⅱ USM
EF100-400mm F4.5-5.6L IS Ⅱ USM
ハスキー
4段
レビュー
長根広和
長根広和 (ながね ひろかず)
1974年、神奈川県横浜市生まれ。鉄道写真家・真島満秀氏に師事。「青春18きっぷ」などの鉄道会社ビジュアルポスターや、カレンダー、時刻表表紙写真などを手がける。また、会員誌や鉄道誌での連載多数。車両そのものの機能美や力強さを表現した写真に定評がある一方、ドラマチックな鉄道風景写真にファンが多い。「列車の音が聞こえてくるような作品」がモットー。
日本写真家協会(JPS)会員
日本鉄道写真作家協会(JRPS)副会長
- 主な写真展 -
2012年
「新田次郎の愛した山々」(スイス鉄道担当) フジフイルムスクエア
2012年
「天空へのみち」 フォトギャラリーUC
2012年
「夢の登山鉄道」 EIZOガレリア銀座
ほかグループ展多数
- 受賞 -
第69回雑誌広告電通賞
ウェブサイト: http://hirokazu-nagane.com/
鉄道撮影と三脚
鉄道撮影というと、車両をメインに捉えた「編成写真」をまず思い浮かべるだろうがそれだけではない。美しい風景と列車が走る瞬間を融合させた「鉄道風景写真」も人気のテーマだ。鉄道好きの私にとってはどちらも楽しい撮影テーマであるが、今はライフワークとして後者の鉄道風景写真をメインに撮影している。風景が魅せる一瞬の輝きと、そこを列車が走り抜ける一瞬との、「瞬」と「瞬」とが融合した時の喜びはこの上ないものだ。

鉄道撮影は手持ち派と三脚派に分かれる。手待ち派は列車を追いながら多くのシャッターチャンスを狙う考え方であり、三脚派は完成された構図で確実に一枚を撮るという考え方だ。私は細部までのフレーミングにこだわりたいので、もちろん三脚派である。ただ、三脚を立ててはいけない場所や、撮影マナーを守らなければならない状況では、当然手持ちで撮影をしている。
自由雲台に対する誤解
細部にこだわるフレーミングを心がけている私は、今まで3ウェイ雲台が必須であった。自身の作品を撮る場合、自由雲台を使用するなど微塵も考えたことはない(仕事上必要な時のみ使用)。なぜかというと、自由雲台だと一定方向の微調整をしようとノブを緩めると、雲台が大きく変動してしまい、また一からフレーミングをし直すという作業をしないといけないからだ。というか、そもそも自由雲台を信用していなかったので、安価な自由雲台しか所有していなかったというのが事実である。

ある時、最近マーキンスの自由雲台を使用している風景写真家が多いということを耳にした。それこそ、緻密なフレーミングが要求される風景写真家が、なぜ3ウェイ雲台を使わず、自由雲台を使用しているのか不思議で仕方がなかった。「ありえない!」というのが私の率直な感想だった。

そんな私に優しい笑顔で「とにかくいいから使ってみてよ!」と声をかけてくれたのが、新進気鋭の風景写真家、中西敏貴だ。中西さんの作品を見れば分かるが、繊細そして緻密なフレーミングはもちろん、ほんの一瞬の光を自在に操る天才。彼にすすめられたら、「石橋を叩いて渡らない」性格の私も使ってみる気持ちになるものだ。

使用した瞬間、私の雲台に対する信念は完全に覆ってしまった。「なんだこの雲台は!!」という衝撃であった。合わせたいところでピタリと止まる。そして、手を放してもそれは微塵も動くことなく完璧にフレーミングを維持してくれる。また、リミットダイヤルで、ボールの抵抗を自分好みに調整できるので、ほんの少しの構図修正をするためにノブを緩めても大きく動くことはなく、3ウェイ三脚より早く微調整が出来てしまうのだ。まさに「感動」という一言に尽きる雲台である。
アルカスイス互換 マーキンス 自由雲台
クイックシューも私は敬遠するアイテムの一つであった。レンズごとにプレートを購入しなくてはならずお金がかかるのと、複数の三脚を所有していると、それぞれの互換性が良くないということからだ。また、数種類使ってみた経験はあるものの、意外とスムーズな着脱ができない印象が強く、なんでわざわざプレートを付けて使い勝手を悪くしているのだろうと思っていた。しかし、これまた私の信念が覆されてしまうことになる。
アルカスイス互換
私はノブシュータイプをチョイスしたが、とにかく着脱が素早くできる。あと、アルカスイスと互換性があるので、他社のアルカスイス対応プレートでも使用できるのだ。そして、今回の撮影は雪の降る手が震える時季の撮影だったのだが、このクイックシューには本当に助けられた。

手がかじかんで思うように動かない時、一般的なネジ式の雲台ではいつも装着がうまくできずイライラしていたのは事実。また、寒くて力が入らないので、しっかりとカメラを固定することが難しい。さらには、防寒手袋を付けていると、そもそもネジを回せないという難点があった。それらの困ったことが一気に解決してしまったのである。他社のクイックシューに比べて、このマーキンスは本当に使いやすい。また、L型プレートも多くの機種に対応しており、三脚座の付いていないレンズでのタテ撮影において、とても便利なことは言うまでもない。
アルカスイス互換 マーキンス 自由雲台
マーキンスと一緒に
鉄道写真家になって22年。今までネジ式3ウェイ雲台信者であり、自由雲台を考える余地すらなかった私が、このマーキンスに出合って雲台に対する思いがすべて変わった。今ではマーキンス自由雲台の操作が体に染みついて、3ウェイ雲台の操作に躊躇するぐらいになってしまった。本当に、私にとっては笑い話である。

今回の作品は、2018年3月31日に廃止が決定されているJR三江線で撮影した。1月初旬に撮影した、まさに三江線最後の冬景色である。大雪が降って2日ほどで運休となってしまい、2月1日現在まだ全線復旧はしていない。廃止まであと2ヶ月を切った三江線に、もう一度マーキンス雲台とともに旅をしてきたいと思っている。
鉄道写真家 長根広和
■ 夜明けを告げる
キヤノン EOS 5D Mark IV / EF24-105mm F4L IS II USM
F4 1/320秒 ISO6400 WBオート
鉄道写真家 長根広和 作例1
■ 故郷へのみち
キヤノン EOS 5D Mark IV / EF100-400mm F4.5-5.6L IS II USM
F7.1 1/800秒 ISO800 WB太陽光
鉄道写真家 長根広和 作例2
■ 鉄道の温もり
キヤノン EOS 5D Mark IV / EF24-105mm F4L IS II USM
F8 2.5秒 ISO800 WB太陽光
鉄道写真家 長根広和 作例3
■ 終列車
キヤノン EOS 5D Mark IV / EF100-400mm F4.5-5.6L IS II USM
F8 1.3秒 ISO800 WBオート
鉄道写真家 長根広和 作例4



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